土地の取引と言えば、売買や譲渡が代表的な事例に当たりますが、これらは権利を移転する取引であり、その登記は司法書士の取り扱う分野となります。
土地家屋調査士はあくまで表示に関する登記、つまり土地の位置形状を扱いますので、一見関連がないように思われますが、実際の取引では、土地家屋調査士も関わることが多くあります。それには次のような理由があります。
取引にあたって、その土地が本当にその場所に存在するのか、それはどの程度の広さ(地積)なのかは、単に取引の当事者間で話し合って決められるものではありません。客観的な判断として、法的な記録である登記記録にもとづくことになります。
しかし、この登記記録は、昭和や明治時代など古い記録がそのまま引き継がれているものもあり、必ずしも取引時点の状況を正確に反映しているとは限りません。また、地積測量図を含む記録が残っていても、その図面に描かれた線の位置が、現況のどこに当たるのか、わからない場合もあります。
このような場合に、土地家屋調査士は、登記その他の資料を調査し、本来の境界(筆界)を復元する作業を行います。また、隣接土地所有者同士での立会を行い、合意を得た証拠として、筆界確認書の作成も行います。つまり土地家屋調査士は、公正な取引のために、現況を登記に正しく反映させる役割を担っています。
現況の正確な土地の位置・形状を登記に反映させる…土地地積更正登記
このように、その土地の周囲全ての筆界を確定し、求めた面積を地積として登記に反映させるのが、土地地積更正登記です。単に地積を正すだけでなく、その筆界位置を、基準点からの座標値で表した地積測量図も一緒に登記記録に残されます。もしも将来、様々な理由で現況の区画や構造物が失われ、見た目上の筆界がわからなくなったとしても、地積測量図に記載の座標値に基づいて、その位置を正確に復元することができます。
土地を分割する…土地分筆登記
一筆の土地すべてではなく、その一部分だけについて取引したいこともあります。また、遺産分割などで、相続人間で土地を分けて相続したいこともあります。このような場合には、土地分筆登記を申請します。但し、土地の一部だけであっても、分筆の際にはその土地周囲全ての境界が確定されている必要があり、近年に分筆された土地の再分筆でなければ、上記のような全周囲の土地との境界確定から行う必要があります。
その他の登記...土地合筆登記、土地地目変更登記
分筆登記とは逆に、隣り合う複数の土地を一筆にまとめたいときは、土地合筆登記を申請します。但し合筆登記をする土地は、現実に隣り合っているなどの合筆制限にかかっていない必要があり、どんな土地でも合筆できるわけではありません。
以前は駐車場だった土地に家を建てたりした場合、現況ではその土地は宅地ですが、登記記録では雑種地のままとなります。土地地目変更登記により、これを現況の地目に変更するよう申請します。
付随する手続き(筆界確認、官民境界確定、農地転用等)
既に述べたとおり、筆界位置の不明な土地は、隣接土地所有者同士で立会を行い、境界を確定させる必要があります。
各土地の所有者が私人である場合には、各々の都合の良い日に立会い、後日筆界確認書を作成すれば足りますが、道路や水路などの官有地(市区町村等が管理する土地)との境界確定の場合は、その立会をするために、申請の手続きが求められます。これが官民境界確定申請です。
土地地目変更登記において、田や畑などの農地を宅地など農地以外に変更する場合、農地転用の許可申請や届出の手続きを求められることがあります。但しこちらは行政書士の取扱う分野となります。
このように、登記申請一つを取っても、それに必要な別の手続きや、必要な書類が細かく分かれます。土地家屋調査士は、現況と依頼人のご要望に応じて、適正な登記申請を選択し、必要な手続きを行います。