土地家屋調査士の仕事を知るためには、まず登記制度について理解していただく必要があります。
不動産(土地・建物)の持ち主
あらゆる「モノ」には持ち主があります。
鉛筆や、机、パソコン、服、車といった物(動産)は、購入して引き渡された時から、その人が持ち主になります。
少々難しく言えば「第三者にも所有権を対抗」できます。
ところが不動産、つまり土地と建物はそう簡単には出来ません。
不動産は基本的に非常に高額な取引が発生しますから、単に引渡しだけで判断できることにすると、例えば空地に勝手に立て札を立てたり、家の鍵を複製したり、あるいは売買契約書を偽造したりして、自分のものだと言い張る人が出てくるかもしれません。それら全てを裁判所の裁判で争うとなると、時間も費用も大幅に掛かってしまいます。これでは別荘も建てられません。
そこで登場するのが登記制度です。
「登記する」とは、法務局の管理する登記記録に、不動産の内容や、それに対する所有権その他の権利を記録してもらうことです。
不動産の持ち主が誰であるかについての法律的な判断は、この登記記録によって行われます。つまり、例え災害などで建物が流され、境界もわからなくなってしまった更地に、誰かが立て札を立てたとしても、登記記録が残っている限り、持ち主はその登記記録による人の物なのです。
また、二重売買が発生した時も、正当な持ち主は、引渡しや契約の前後ではなく登記の有無で判断されることからも、登記の重要性はお分かりいただけるかと思います。
不動産の範囲
このように、不動産の権利に対して重要な役割を果たす登記制度ですが、記録されるのは持ち主などの権利だけではありません。
例えばある土地が登記によって自分のものであると主張できても、「その土地はここまでです」と、とても狭い範囲を示されてしまうおそれがあります。
そうなってしまっては、意味がありません。
そのため、登記には、その不動産に関する権利のほか、その権利の及ぶ範囲に関する情報も記録されます。
登記記録上、前者を「権利に関する登記」、後者を「表示に関する登記」と呼びます。
権利の及ぶ範囲とはすなわち不動産の位置形状など実態状況を表す情報であり、土地ならば地番を付した上で、その地目(土地の用途)や面積(地積と呼びます)が記録されます。
建物であれば所在とともに建物番号が付され、種類、構造、床面積が記録されます。
その他、土地の場合は別途地積測量図、建物であれば建物図面・各階平面図が作成されれば、登記記録とともに登記所に備え付けられます。
それから、全体的な位置関係を示す記録として、地図(または公図と呼ばれるもの)が備え付けられています。
不動産の権利の範囲を守る土地家屋調査士
そうしてようやく土地家屋調査士の仕事の説明に至るわけですが、土地家屋調査士は先述の「表示に関する登記」を扱う専門家です。
土地を分けたい時や、一つにまとめたい時、あるいは土地の用途が変わって登記記録の地目と変わってしまった時に、登記記録と現況を合致させる役割を担います。
登記記録の調査から、現況の調査、測量、境界立会、その他手続きに必要な文書その他の情報を作成します。